教会開拓では開拓者の妻にも特有のニーズや葛藤があります。パラカレオは開拓者や牧師の妻(また日本では教会開拓の女性スタッフなども対象)に、福音にあるアイデンティティを思い出せるようなセルフケアツールを紹介し、励まし助け合う仲間との交流を提供しています。今回は2020年日本インテンシブ期間中に同時開催されたパラカレオに参加したバニング望さん(写真右端)にお聞きします。
ーまずは自己紹介からお願いします。
バニング望(のぞみ)です。千葉市出身です。クリスチャンホームで育ち、小学生の時に信じて洗礼を受けました。19歳の時に留学する道が開かれ、かれこれ17年ほどアメリカに住むことになりました。もともと高校生の時から海外宣教に思いがあったのですが、まさか日本に宣教師として帰ってくるとは思いませんでした。
ーそれなのに日本に帰ってきたのはジャレッドさんと結婚したから、ですか?
彼は祖母が日本人で、前から日本宣教の思いはあったみたいです。でもアメリカで出会って結婚してから日本への道はなかなか開かれず…
私自身は、アメリカの教会のスモールグループで福音にある生き方を経験して、私もこのように生きたい、日本の方たちにも伝えたいという思いが与えられていました。アメリカでの生活が17年経った頃、不思議なことにそれまでの障害が全て取り去られて、サポートも集まり、2019年9月に家族6人で日本へ宣教師として派遣されました。今、幕張の自宅マンションで教会開拓をしています。家族も7人に増えました。
ーパラカレオに参加したきっかけは?
CTCJのインテンシブトレーニングが2020年10月東京で開催された時、夫婦で出席することになり、2週目に妻たちのためのトレーニング、パラカレオがあるよ、ということでそれが何なのかよく知らないまま参加することになりました。
ーパラカレオに参加する前と後とではどのような変化がありましたか?
教会開拓者の妻へのサポートとケアがいかに必要かを認識しました! それまで私たちも派遣教会からのケアやサポートは夫か夫婦に提供されるもので、妻としての私個人を対象にしたものはありませんでした。だから妻たちのケアなんて考えたこともなかったんです。でも牧会上のストレスから燃え尽きてしまうケースは今までも見聞きしていたので、パラカレオを経験してその大切さに気がついたという感じです。
パラカレオのおかげで他の教会開拓者の奥さんたちと繋がることができました。祈りの友ができ、教会開拓中の難関地点で助けや祈りを求められる場所になりました。色々な福音ツールを知って日常的に自分に適応できるようになったし家族や友人にもそのツールを使って福音に生きることを紹介できるようになりました。
個人的に心の変化で一番大きかったのは、自分のアイデンティティを「神様に愛されている娘」として再認識できたこと。アメリカに長く住んでいた時も、日本に帰ってきた時も、どこにも属せない自分がコンプレックス(?)でしたから…
ーそうなんですね。開拓者の妻として、ご自身の経験上、難しかったこと、嬉しかったことをそれぞれ教えてください。
そうですね、もちろん自分の意見はちゃんと伝えますが、最終的には夫の判断に従うことかな。日本で生まれ育った私は、夫よりは日本文化や日本人の考え方などに精通してると感じて、伝道方法や集会のやり方とか色々口出ししたくなってしまうので。とはいえ夫がアメリカ人で、多くの人にとっては日本語を話す私の方が話しやすいので、私が真ん中に立って通訳になってしまうことが多いですね。それと子育てとの両立も難しいかな。マンション内での教会開拓なので、非常に人とのつながりが濃い場所なんです。良い証を立てたいと思うあまり、それ自体が偶像になってしまうこともありました。嬉しかったのは、何もないところから始める教会開拓だったので、子供たち(特に上の子二人)も一緒に教会の活動の中に巻き込めたことです。
ー家庭と仕事とのバランスはどのようにとっていますか?
仕事、っていう定義が、今は難しくて。なるべく子供が学校に行っている間に仕事を済ませるようにして、午後は子供たちに集中するようにしています。ただ、家庭生活に「仕事」が編み込まれているので線引きするのが難しいのが現状です。
ー自分自身のケアはどのようにしていますか?
自分へのケアを考えたことはもちろんあって、パラカレオでも学びましたが、なかなか実践できずにいました。でも今年から定期的にエクササイズを始めました。一人じゃできないので、友達とお互い励まし合いながら。体を動かすことだけでなく、神様との時間、自分の決めたゴールの達成や、栄養管理とかも一緒にアカウンタビリティーをもってやっています。あと祈りの友とウオーキングをしたり、人を巻き込みながらやっています。とにかく意識してやらないと、セルフケアは後回しになってしまうので…
ーそうですよね、それにしてもコロナ禍でご自身の仕事や家庭生活にどのような変化がありましたか? どう対応していますか?
コロナ禍と共に始まった教会開拓なので変化はわかりませんが、家に人を招きにくくなりましたね。家の中ではなく、マンションの中庭を使ってママ友とお茶したり、ママ友と子供たちとハロウィンやイースターのイベントをやったり。
人に会う機会が減ったので、車を使わずに幼稚園のお迎えは必ず歩きで行って、帰りは公園で人に会う機会を作ったり。スーパーのレジは、なるべくセルフレジではなく、同じ従業員さんのレーンに並んでお友達になったり、取るに足らない変化ですが、神様が働いてくださることを信じてます。
ー座右の銘は?
Nothing to prove. Nothing to lose. (証明するものも失うものもない)
パラカレオで学んだ法廷の図をよく思い出して、自分に語りかけています。自分の偶像は、人からの承認や、評判なので、それらが得られないときに不安になったり、自分でどうにかしようと葛藤したりします。
そんな中、イエス様が私の弁護人となって法廷に立っていてくださることを思い出して、福音は、私が何かしなくてはいけないものではなく、イエス様がもうすでにしてくださったことを信じることだ、ということを思い出すんです。人の評価や、申し立てをしなくてはいけないという焦りから解放されて、もはや自分をも裁かない、もう無罪の判決が下されているんだ、というリマインダーです。
ー今後、パラカレオについて、日本でどんな活動や展開を期待していますか?
パラカレオで充電できる場所が増えること。それと学んだ私たちが、それだけで満足するのではなく、更に次世代に引き継いでいけるように訓練の場が与えられると嬉しいですね。