コロナ禍 仕事の混乱にどう対応したか

キーワーカーへの感謝の思い強まった

クリスチャン新聞8月2日号掲載 中田朗記者


 

様々な分野の仕事に影響を与えている新型コロナウイルスの感染拡大 。イエス・キリストの光を日本の働く場にもたらすことを目指す「Lightプロジェクト」(ディレクター:サックス知子)は、米ニューヨーク市にあるリディ マー教会(創始者:ティモシー・ケラ―ー)の教会開拓機関の中のグローバル・フェイス・アンド・ワーク・イニシアティブが制作した「コロナウイルスによる仕事の混乱ツール福音の希望を適用するモデル」を翻訳し、一部日本の状況などを追加点変更して作成。日本の教会開拓機関City to Cityジャパン(ディレクター:デイミアン・グレイトリー)とパートナーを組み、コロナ禍の中で仕事に不安を覚えている働くクリスチャンに向けプレゼンをした(7月5日号で既報 )。今回は、プレゼンを受けた参加者がその後、コロナ禍で仕事がどんな状況になり、どう対応したか、スモールグループでのディスカッションの一部を紹介する。

copyright: Global Faith & Work Initiative

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記者が参加したスモールグループでは、名古屋 にある老人介護施設でケアマネージャーをしている宮本英樹 さん(マスタードシードクリスチャン教会名古屋 会員)、協力牧師の島谷 知明さん(マスタードシードクリスチャン教会神戸 )、外国 人に日本語を教える日本語教師をしている森本聖美 さん(オール・ネイションズ・フェローシップ会員)、一般企業に勤めている大原早人さん(改革長老・武庫之荘教会員)が参加した。

最初 に宮本さんが、今の仕事の現状を語った。「うちの施設 ではコロナ陽性 の方は出ていないけれど、いつでも対応でききる体制で動いている。愛知県では新規感染者はそれほど出ていないが、第二波 が来るだろ うという前提 「で動いている。職員も手洗 い、うがいはもちろん、県外 に行くことはやめようと自粛 している。人のいのちを預かる仕事なので、自分たちが相手に感染をさせてはいけないと、いつも緊張して仕事をしている」島谷 さんは「どうやって教会を通常の形に戻していくかをいちばん気にしている」という。「私たちの教会はベビ ーラッシュで、赤ちゃんや小さい子がいる家庭 が増えてきている。でも、そういう家庭 に礼拝 に来てもらうのは危ないし、来るなとも言えない。教会に来ることに躊躇 しておられる方に、『来 て』というメッセージをすると、かえって追い詰めることになる。礼拝 も当分、オンラインとリアルの二段構 えでやっていかないといけない。今は福音を伝えるだけでなく、サポート的なものを合わせてしていく必要 を感じている」

森本さんは、「私の場合は、仕事が減ったりなくなっている状況という不透明な中でどうしようか戦略を立てるA区分に当てはまる」と言う。「私は3か所で教えている。一か所目は留学 生のための学校だ が、そこは3月後半 からほぼ2 か月休み、再開したのが6月から。その間収入はゼロで、休みの間何をしたらいいのだろ うと、ずっと焦っていた。二か所目は技能実習生を教える学校だ けれど、技能実習生は3月末で入国できなくなってしまったため、そこからストップしてしまっている。今は先生方とZoomで次の入国のための授業の準備 をしている。幸い、そこには助成金が出る。三か所目は外国 人生活者のために日本語を教えている。そこは止まることなく継続 していて、1か月ぐらいはオンライン授業をしている。オンライン授業は今まで体験がなかったので、授業の準備 がとても大変だった」

大原 さんは「グループ会社全体で就業時間 を短縮 するのと、通勤 ラッシュを避けるため、7時半 から8時半 まで15分間間隔 で出社していた」という。「従業員のうち何人かが感染したと聞いている。事務所 では机と机の間にパーティションを置いて感染予防 している。国内 の出張 はOKだ が、海外 に技術 者を派遣 することはできない。私が関わる部署は船舶 関係だ が、今回のコロナ騒ぎ で世界の物流量 が格段 に落ちた。世界中で仕事が止まり、経済規模も世界的に縮小 している。自分の身の回りだけでなく、世界的に見てもこれはえらいことだな、と。子どもがいる私の同僚は、学校 が始まったらどう順応 させるか大変だと聞いている。私の下の娘も授業が始まって、しんどいと言っていた。そこそこ大きな企業グループとは言え、先行きに不安を覚える」

それぞれの報告を受け、互いに質問し合った。「今、教会でしようと思っていることは」という質問に対し、島谷 さんは、「教会にオーナーでクリスチャンの方がいる。そういう方を通して、漠然 と不安を持っている人がその不安を話せる場を設けたい。誰にも声をかけてどうこうする話ではなく、まず小さいところから始めてみようかなと」 「留学 生、外国 人労働者の現状は」という質問に対し、森本さんはこう語った。「衝撃だったのは、不当解雇 されたベトナム人の技能実習生20人が名古屋 にあるお寺に集まって生活しているというテレビニュース。帰国したいけれど帰れない、という現状を見た。配属された仕事先から戻されたという技能実習生もいた。留学 生はアルバイトができない状況が続いており、学生によっては、節約のために一緒に暮らしている人も多い。私がかかわっている人たちは仕事がなくて大変だ。うちの教会の留学 生もこの春卒 業したが、仕事が見つけられない。彼らはタイミング的にかわいそうだ」

他のスモールグループに参加したメンバーからも感想を聞いた。西本慎之介 さん(同盟基督・招待キリスト教会員)はこう感想を語った。─電機メーカーで、特に特許 を扱う仕事をしている。これまでずっと会社に通っていたが、今はテレワークになり、家で仕事をする時間が増えた。私の場合、圧倒 されつつ、何とかついていこうと必死 なC区分に属すると思う。特許庁に対する仕事だが、特許庁 は期限を待ってくれない。テレワークで効率 が落ちたこともあり、仕事量は増えている。

その中で、改めて仕事の大切さに気付かされた。良い仕事、悪い仕事という先入観があったが、それが薄れ、特にキーワーカーに対する感謝の思いが強くなった。例えばコンビニエンスストアの店員、ゴミ収集の仕事をしている人、医者など、普段、目に留めなかったような人たちに目が向くようになった。これらの人たちは、感染するかもしれないというリスクの中、命がけで仕事をしている。あの人たちがいなければ、僕らの生活は成り立っていかない。目立たないけれど共同体を支える必要 な仕事なんだ、と。そう思うと、本当にすばらしいことだなと改めて思った。

仕事をするモチベーションも上がった。特に目に見えない、上司に評価 されないような仕事を大事にするようになった。たとえは、私は研究 所の研究 者を担当しているが、重要な研究 者だけでなく、そうでない研究 者に対してもサポートできないかと考え、実行 するようになった。上司に評価 されるかどうかでなく、仕事にはすべてに尊厳 があって、関係している人を支えることに意味があるのだと気づいた。

アルコールメーカーが消毒液 を作ったり、洋服 メーカーがマスクを作ったりなど、異業種メーカーが新しい試みを始めていることにも刺激 を受けた。このコロナ禍の状況で、あえて通常のラインを外れ、社会のために役に立つことを、みんながしている。いい仕事をしているなあと思った。─

蛭沼恵 美さん(福音自由・東京 センターチャーチ会員)は職場の総合病院 で、他のクリスチャンたちとスモールグループを開いた。「違う状況にいる人を知るプロセスにおいて、自分の考えを正義として他の人を責める自分がいた」「『ありがとう』『 いてくれてよかった』という言葉をかけてもらったことで、自分が必要 とされていること、自分にしかできない仕事がある、と思わせてもらい、解放 された」という感想や、「クリスチャンとして今できること」として、「派遣 でも、アルバイトでも、自分の置かれた状況を感謝する」、「言葉に十分気をつけながらも、その人の状況を理解した上で励ます」、「クリスチャンとして誠実に、忠実に、落ち着いて、仕事をする。生き方で証しする」などの声が聞かれた。

その他、「一人で仕事をしていくのは孤独 だったり、霊的戦いがある。しっかり信仰に立つことを試された」、「職場での人間関係が表向きなことに気付いた。もっと同僚をケアできたのではないかと反省 し祈ったら、機会が与えられた」、「自粛 中、自分の過去 の人生を振り返る時間 が与えられた。癒される必要 があり、その悪い影響が会社で人間関係に出てしまっていることに気付いた(カウンセリングを学び 、癒されつつある)」、「残業代がなくなり、在宅で食費がかさみ、経済的にはきつくなった。だが、働く場が与えられていることに感謝している」、「客室乗 務員として今まで働きすぎだ ったので、現在の方が良い。日曜日、教会の学び にも参加する時間 が出来 た」、「いまのところ給与が下がらず、恵まれていて、正に神が見守 ってくださっていることが分かる。(詩編 11 :4)だが、将来は年齢的に不安もある」などの声があった。

 

著者

サックス 知子

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信仰と仕事ミニストリーのLight プロジェクトの創設者、ディレクター。マーケティングでMBA(経営学修士)。30年あまり、セールスとマーケティング・マネージメントにおいて、日本、米国、中国、香港で働いた。1996年に、プロ音楽家・教師で、現在グレースシティチャーチ東京の長老であるスティーブと結婚。2005年から2009年まで、スティーブがリーダーをするCity to Cityが日本で支援する教会を開拓するためのお祈り・準備チームのコーリーダー。