教会開拓者向けのインテンシブトレーニングは世界各国で開催されています。今回は2021年、CTCAP(アジアパシフィック、英語での開催)のオンラインインテンシブに参加したジェシー・ローズ先生にお聞きしました。
ー自己紹介をお願いします。
ニューヨーク州クイーンズ出身のジェシー・ローズです。妻のキャンディとともに、日本に福音中心の教会が建てられていくことを願って2012年から日本で働いています。もともと妻とは神学校で出会い、南アジアのどこかで宣教したいと思っていましたが日本は念頭になかったんです。でも経済大国なのにクリスチャンや教会がとても少ないと知って、日本への思いが与えられ、道も開かれました。最初はインターナショナルスクールの教師として働き始めました。我が家の3人の子供たちはそれぞれ名古屋、大阪、福岡で生まれたんですよ。趣味は読書、ランニング、好きなイギリスのサッカーチームを応援すること。2019年から風光明媚な福岡に住んで、地元の日本人教会と協力して天神地区にバイリンガルの福音を中心とした新しい教会を始めようとしています。
ーインテンシブに参加したきっかけは?
2019年にゲイリー・ワタナベ先生と話したのがきっかけです。福岡でのミニストリーや教会開拓の可能性を探りに来た視察グループの一人だったんです。私はその数年前にすでにゲイリーさんと出会っていて、福岡市が教会開拓の広がりにはとても重要なところだということを何度かお話したことがあったんですね。ワタナベ夫妻の訪問中、福岡で教会開拓したいと話していたんですが、具体的にはまだよく見えていなかったんです。ただ、福音中心のバイリンガル教会を福岡の中心部で始める、という私たちのビジョンがあって、それを共有できるような日本人の牧師先生と協力関係が与えられたらいいなあと祈りながら待っている状態でした。その後間もなく、福岡中心部で教会を開拓するというビジョンをもった地元の教会とつながることになるとは、当時の私は思ってもいませんでした!
その教会に最初の一年は礼拝出席者として参加し、約2年後の2021年初めに、牧師先生からバイリンガルの娘教会を始めるのを手伝わないかと打診されました。そのためにもCTCAPのインテンシブトレーニングに参加したらいいのではということになり、ゲイリーさんにメールで聞いてみました。福岡でゲイリーさんと話し合ってから約2年経った頃でした。こうして、2021年春のCTCAPのインテンシブに福岡の自宅からオンラインで参加することになりました。
ーインテンシブに参加する前と後とではどのような変化がありましたか?
インテンシブに参加して、いろいろな面で非常に学ばされました。参加する前の私は、教会開拓のプロセスについて本当に自信と理解が足りませんでした。私の教会開拓に関する知識は理論中心で、現実との間には多くのギャップがあったんです。本当に大切なことを考えずにいたんだなと気づかされました。インテンシブで講義を聞きディスカッションしていく中で、福音中心の教会を一から建て上げるプロセス全体がイメージできるようになったし、実際に教会開拓を進めていく自信がつきました。
また福音を中心とするインテンシブの視点からも大きな収穫がありました。私はそれまで長年、福音を中心とした説教やミニストリーといった考えを一般的には受け入れ実践しようとしてきましたが、インテンシブで、福音がどのように私たちを本当の意味で変えるのか、といったことについてもっと深く理解できるようになりました。インテンシブはそういう意味でも、私の霊的生活とミニストリーのあらゆる側面の捉え方に大きな影響を与えたと思います。
ーなるほど、インテンシブでは開拓者の心の動機から具体的な資金調達など、多岐にわたって取り扱われます。自分自身の生活から教会開拓の進め方など、全体を具体的にイメージしやすいのかもしれませんね。では開拓者として、ご自身の経験上、難しかったこと、嬉しかったことをそれぞれ教えてください。
私は教会開拓を始めてまだ日が浅いですが、今、直面しているのは母教会での継続的な働きと、娘教会の立ち上げに向けた前進とのバランスの取り方です。母教会では月に何回か説教をさせていただいていて、この準備に必要以上に時間をかけてしまう傾向があります。この1年は自分の時間とエネルギーの限界を日々思い知らされながら、時間管理や効率化について大きく成長しなければならない年でした。
また、心の奥底を探られる「成長痛」を感じる時期でもありましたね。私は自分の価値を高めるために「できる人間であること」を求める傾向があります。その結果、完璧主義という不健康な状態に陥り、そこから行動してしまうことが多いんです。自分の完璧主義の根底にある偶像礼拝や自己中心的な考えと向き合い、それに取り組まざるを得ない時期でした。
反対にうれしかったのは、福音によって新たにされ、自分たちの街に福音を伝えたいという願いをもった日本の先輩クリスチャンの喜びと興奮を目の当たりにしたことです。私が今ともに働いている教会は、設立してから約60年、福岡の街を見下ろす場所にあります。その教会で20年以上歩んできた信徒の皆さんが次世代を思い、新しい教会を開拓しようという熱意をもっていらっしゃることに感銘を受けました。
ー家庭と仕事とのバランスはどのようにとっていますか?
私自身、牧師家庭で育ち、ミニストリーと家庭の不健全なバランスを経験しています。ミニストリーに専念する父から学ぶこともあれば、時に距離を感じることもありました。にもかかわらず私も以前は家庭と仕事のバランスを取るのに本当に苦労しました。妻が辛抱強く、優しく接してくれたおかげで、徐々にですが、健全な境界線を保てるようになってきました。
たとえば、ある特定の時間を「神聖な時間」とするようになったからということがあります。毎週1日、通常は土曜日を家族と一緒に過ごすための時間として分けておきます。また、夕食から家族の就寝時間までの間、妻や子供たちとどう過ごすか意識して考え行動するようにしています。だからみんなが寝静まった後、遅くまで頑張らなければならないこともありますけどね(笑)。
この境界線はいつも保てるわけではないですし、仕事と家庭のどちらかを優先させることなくうまくバランスをとっていくというのはとても難しいですよね。でも家庭とミニストリーのバランスは、私たちの誠実な歩み、また健康を考えると、とても大切で簡単に後回しにできるものではないと思うんです。特に日本では周りからのプレッシャーもあり、リーダーは常に忙しくしていないといけないように見えます。教会のリーダーとして、ミニストリーやキャリアの成功のために家族を犠牲にしないこと、福音を中心とした労働倫理とは何か、それは具体的にはどういう姿なのか、そういう問題について模範になる責任があると思いますし、私もまだ発展途上ですがそれを目指しています。
ーご自身のケアはどのようにしていますか?
朝のランニングです。心も身体も、そして霊的にも助けになるし、その後の一日に大きな違いをもたらします。それに福岡の美しい景色を楽しみながら走ることができますしね。
ーコロナ禍でご自身の仕事や家庭生活にどのような変化がありましたか? それにどう対応していますか?
パンデミックによって確かに私たちの計画はだいぶ影響受けましたし、いろいろなことが前より難しくなっていますね。いまだに足りなさや制限を抱え生活してはいるものの神様は私たち家族にとても寛大だったと思います。特にこの2年間に大きな喪失を経験した多くの人々のことを考えるとこの思いはなおさらです。
ー座右の銘は?
”Every story whispers his name”
「どの物語もイエスの名をささやいている」、ジーザスバイブルストーリー英語版のサブタイトルです。
ー他の牧師、伝道者、ミニストリー従事者に、CTCJのインテンシブ参加をお勧めしますか? それはなぜですか?
CTCJインテンシブは、ミニストリーに携わるすべての人にお勧めします。この中には特に教会開拓に関連するものもありますが、すべての内容の根底に福音を中心としたミニストリーへのアプローチがあり、どんな状況にも適応し活用することができます。人々の生活に福音による変化をもたらすようなミニストリーを始めたいと願っている人なら、CTCJインテンシブで聖書に基づいた神学と方法論を学べると思います。
ーこれから教会開拓を考えている方にCTCJのインテンシブ参加をお勧めしますか? それはなぜですか?
都市や地域が福音によって変えられることを願う教会開拓者の皆さんにとって、インテンシブは教会開拓という課題にフォーカスし、理解を深めることができるものだと思います。内容はとても豊かで、トレーナーたちの経験や知識から教えられる事柄はとても貴重でした。
ただこのインテンシブに参加する本当の理由は、参加するみなさんの教会開拓や宣教にどういった形式、影響を与えるかということにとどまらないと思います。むしろ本当の理由は、この機会はあなた自身をどのように形づくり、どのような影響を与えるか、ということかと。私自身は、個人的に自分自身の心をもっと見つめ、福音をどう適用すれば自分の心が変えられていくのか、以前より深い理解が得られたと思います。福音を中心としたミニストリーは、福音を中心としたリーダーから始まります。このトレーニングは、リーダーの内面や福音の成長に重点を置きながら、ミニストリーの実践的な「ハウツー」を関連付けるという点で、他に類を見ないトレーニングだと思います。
ー今後、インテンシブについて、日本でどんな活動や展開を期待していますか?
本州に数年住み、今は九州に住んでいますが、リソースやトレーニングへのアクセスに明らかな違いを感じています。いつか九州地方で、CTCJに啓発された地域インテンシブや新しいネットワークが始まったらいいなと思います。