日本インテンシブに参加して

私は大舘晴明と申します。妻と4人の子供がおります。友人の宣教師家族と昨年から千葉で教会開拓を始めました。今回は2020年のCTCJの日本インテンシブに参加した経緯と、そこで得た恵みについて分かち合いすることができれば、と思っています。

クリスチャンになったのは33歳の時で、ブラックゴスペルのクワイアに参加したことがきっかけでした。高校生の頃からエレキギターを始め、ロック、ブルース、ソウル、ファンク、ジャズなどを聞いたり演奏したりしていました。音楽はいつも人生の中心にありました。プロになりたかったですが、そのようには導かれず、また、その他色々な状況から人生に行き詰まりを感じ、生きることの意味が分からなくなってきたような時期に、ゴスペル音楽と出会いました。初めは音楽的な興味だけでしたが、歌うことを通して心が柔らかくされ、歌詞を覚えていくうちに福音が刷り込まれていきました。そのようにして救われていった人たちは当時私の周りには沢山いました。

結婚を機に東京から千葉へ戻り、教会も変わりました。バプテスト教会で洗礼を受けメンバーとなっていましたが、地元千葉へ戻ってからは長老教会のメンバーになりました。その教会で牧師は、一緒に聖書を勉強しませんか?と誘ってくださり、毎週、一対一で聖書の話やクリスチャンとしての歩みの話などをしてくれました。2011年の東日本大震災の後、災害支援ミニストリーのグループを立ち上げ、そこに加わるように誘ってくれたのもその牧師でした。それが自分にとって初めての「ミニストリー」でした。

その働きを通して、福音を告げるためにはもっと自分が聖書を知らなければならないと痛感し、神学校へ行くことを決心しました。神学校での学びや経験、教授たちや卒業生たちの歩みを見ることによって、自分が将来何をしたいのかが、だんだん明確になっていきました。その神学校はアメリカ南部のミシシッピ州にありましたが、バイブルベルトとも呼ばれるその地域には保守的なクリスチャンが多く、霊的にも成熟している方達に囲まれて、大変良い経験になりました。日本とは教会の事情も大きく異なり、一つの教会に牧師が何人もいたり、何十人という長老たちによって小会(地域教会のリーダーシップグループ)が形成されているということも珍しくありませんでした。広大な敷地内に巨大な礼拝堂や、隣接された学校、多目的ホールなど、幾つもの建物があり、野球ができそうなぐらいの駐車場がある、というのも当たり前でした。高速道路の出口から自分が住んでいた神学校までの2キロ弱の間に教会は6つくらいありました。

日本にいたときは、ミニストリーはしていましたが教会開拓はおろか、牧師になるというビジョンすらありませんでした。それは誰か他の人がやることで、自分のやりがいや生きがいをそこに見出すことはできないと思っていました。日本はクリスチャン人口も少なく、「与える(Giving)」という感覚もアメリカと比べると希薄です。それは教会の献金にも表れています。アメリカでの経験を通して牧師になりたい、教会開拓をしたいという思いが与えられましたが、同時に日本でどうやったらそれができるのだろうと考えるようになりました。また、自分はどうして今アメリカにいるのだろうと考えました。英語ができたわけでもなく、貯金があったわけでもありません。神様が全てを備えて道を開いてくださらなければ起こり得なかったことでした。神様がここに連れてきてくださったのだから、この機会を最大限に生かす必要があると思い、そのためにはここで按手を受け宣教師として正式に日本に送り出してもらうのが良いと考えました。それによって正式に資金調達もでき、人材のリクルートもできます。そう決めた後はそのための道筋を模索し、色々な人に助けてもらいながら、2019年にアメリカ長老教会(PCA)から按手を受け、宣教師として送り出していただくこととなりました。

話が少し前後しますが、神学校卒業後帰国したのが2018年6月で、それから母教会でインターンをしながら按手のための準備をしていました。自分にはすでに教会開拓のビジョンがあったので、日本の教会での組織や牧師たちの牧会の様子、説教など、様々なことを観察し、見習うべきところ、そうでないところなどをリストアップしていきました。自分の学んできた神学や経験がどのように適応できるか見極めるための時間でした。充分な時間を取った後、按手も受け、いよいよ教会開拓を始めようというとき、コロナウイルスのパンデミックが始まりました。大方の皆さんと同じように、全ての計画が一時停止となってしまいました。

シティ・トゥ・シティのことは以前から聞いたことはありました。ただ私は教会開拓のことや資金調達のことなど自分のことだけに没頭していたため、自分の世界の外側で起こっていることにはあまり関心がありませんでした。宣教団体主催のトレーニングなども紹介してもらったことはありましたが、アメリカでの素晴らしい経験や、神学校での深い学びをした後で、何か得るものがあるだろうか?という慢心と、長い拘束時間(5日間から長いものは2週間)は小さな子供たちのいる家庭を持つ自分には無理だという諦めもあり、参加を見送ってきました。CTCJが日本でインテンシブをすると聞いたときも、2週間東京のホテルに泊まって朝から夕方まで講義を受けるとのことで、自分にはハードルが高すぎると思い、参加は諦めていました。

ところがコロナ禍でオンラインでの参加が可能だということになりました。また、教会開拓をしようとしているのなら、教会開拓者向けのトレーニングなので視野を広げる意味でも絶対に参加した方が良いと強く勧めてくださる方もいました。そういった経緯で参加を決意しました。2週間のうち1/3程度は現地に行って対面で参加できましたが、残りの2/3はオンラインで参加しました。神学校の授業を受けるような心構えで臨み、ノートとペンを用意し、iPadで事前に配られたパワーポイントのスライドを見ながら、ラップトップでズームを開き講義を聞きました。

まずその情報量に驚きました。神学校での学びが建築に必要な知識と技術の習得だとするなら、インテンシブでの学びは地震と湿気が多く土地代の高い日本でどのように最適な家屋を建てたら良いか、という感じでした。私の出た神学校はリフォームド(改革派神学)で、シティ・トゥ・シティもリフォームドに基盤を置いているので背景はは同じなのですが、それをどのように具体的に日本の都市で教会を始めるために適用していくのかということを学ぶことができるため、私のノートはすぐにびっしりと書き込まれてしまいました。

聖書全体を一つの物語として見ていく読み方やサンシップ(https://serge.org/book/sonship/)の学びの要素なども散りばめられているため、そのようなことを過去に学んだことがある人にとっては親しみやすい内容ですし、初めて聞く人にとっては目が開かれるような思いになることだと思います。シティ・トゥ・シティ自体は超教派の団体なので、参加者たちの様々な視点からの意見なども聞けて、それも非常に実践的で役に立ちます。

プログラムの最初の数日間は基本的な福音神学と個人の内側に目を向ける時間となります。これから教会を始めようとする人が、自分自身を吟味し、研がれていく、そのような時間で、私にとってはとても重要な時間でした。神学を学ぶことは楽しいですし、実践的な項目(資金調達やリーダーシップ・トレーニングなど)では新たな発見があったりして刺激的ですが、個人的には自分自身と向き合うような、個人の刷新や祈り方といった学びが非常に助けになりました。

2週間は確かに短くはありません。しかし終わってみたらあっという間でしたし、情報量の多さから、復習のためにもまた次回も参加したいと思うようになりました。実際に2021年のCTCAP(シティ・トゥ・シティアジアパシフィック)主催のインテンシブにオブザーバーとして参加しました。また、インテンシブで出会った人たちは皆同じ志を持っている人たちなので、今後も良い関係を維持していけると思っています。今後もCTCJとは様々な形で関わっていきたいと願っています。


著者:大舘晴明

Haruaki Odate

アメリカ長老教会教師。日本長老教会協力教師、おゆみ野キリスト教会牧師として千葉市中央区に新しく教会を開拓中。