日本インテンシブ体験記

2020年の日本インテンシブはコロナ禍で、会場参加、オンライン参加のハイブリッド形式で開催されました。(今年は会場開催のみ)オンラインで参加された我如古先生に、その経験についてインタビューしました。



ーこんにちは、自己紹介をお願いします。

沖縄県出身で、沖縄県読谷村で2019年9月から教会開拓をスタートしました、我如古伝(がねこ でん)です。家族は妻と犬1匹です。クリスチャンホームに生まれ育ちましたが、15歳の時に姉から「今死んだら天国に行けると思う?」と聞かれ、初めて家で聖書を開き、自分で読んでみました。それまで教会では聖書に親しんでいましたが、それでいて悩みや葛藤はなく、なんというか信じるきっかけを探していました。高校一年の時、ヨハネ20章でイエスがトマスに「見ないで信じる人たちは幸いです」と言う箇所を読んで「ただ信じてもいいんだ」と思い、信仰を告白しました。

ーずいぶん素直なティーンエイジャーだったんですね。

信じてからのほうが色々ありましたよ。洗礼を受けて聖められた気はしたけれど、本当に自分は救われているのかと悩んだりして。例えば、僕、高校の時、彼女が欲しかったんだけどできなかったんですね。でも、もしできてたら、自分の性格から言って道を踏み外してた可能性大だと思うんです、笑。神さまよりも彼女との時間や人生のほうを第一にしてしまっていたんじゃないかと。そういう人生の様々な選択において、自分の意見よりも神の意見、つまり聖書が言っていることが正しいのだから、そちらに従ってみようという練習をさせられた時期がありました。

ー神の意見の方が正しい前提なんですね。神に対する反抗はなかったんですか?

クリスチャンホームで小さい頃から神さまの存在が当たり前にあったし、自分より神のほうが正しいという前提は、これはなんというか説明しにくいというか、本当に神の働きとしか言いようがないですね。でもそういう練習をさせられている時に、周りでは信仰や教会から離れていく友人もいたりして、気がついたら自分は「生き残ってしまった」という感覚を覚えるようになりました。つまり、自分が救われたのは、自分がちゃんとしていたからとか、何かできるからとかではない、一方的な恵みによって信仰が与えられ、彼女とか、神以外のものに惹かれていくような自分の弱さからも救ってもらったと思ったんです。それならこの生き残った人生を神さまに捧げたいなと思うようになりました。

ーなるほど。教会開拓に携わるようになったのはなぜですか?

もともと教会がいっぱいあったらいいなという思いはあったんです。神に人生を捧げると決心した時も、献身イコール牧師になるではなく、とにかくやりたいことをやってみよう、聖書が好きだから聖書を学んでみたいという思いでアメリカの神学校に行くために、まずはフィジーに語学留学することになりました。ところがフィジーに行ってみたらそこはキリスト教国で、集まってくる日本からの留学生に聞かれたりして、気がついたら自然とキリスト教や聖書について教えている自分がいました。福音を伝えるという行為自体を通して、僕にとって牧師という働きがより具体的になったと思います。無事アメリカ留学も終えて帰国して母教会の伝道師として働き出しましたが、神学校に行く前とやっていることはほとんど変わらなかったと思います。実際に開拓することになったのは、たまたま安く広い一軒家を借りられることになって、それならここに集まれるのでは?ということになり母教会の理解も得られて始まりました。今年で3年目です。


ーインテンシブに参加したきっかけは?

インテンシブのオブザーバーとして参加する同じ教団の牧師に紹介していただきました。ティム・ケラー氏の本が好きで、邦訳されているものはほとんど読んでいたので、それも参加のきっかけになりました。福音中心の教会開拓を目指していたので、インテンシブはまさに私が学びたい内容のセミナーでしたし、何より開拓は一人で取り組めないと思っていたので、コーチングをしてくれる人を探していたんです。牧師仲間の一人がとてもいいコーチング体験をしていたので、自分もコーチが欲しいなと。母教会の副牧師たちからも定期的なケアを受けていましたが、それとは別に、他のコーチをもってもいいと了承もいただきました。

ーインテンシブ参加する前と後ではどのような変化がありましたか?

自分に福音を語るということをより意識するようになりました。福音はまだクリスチャンではない人だけのものではなく、日々自分が帰ってくるべき家のようなものだと考えるようになりました。自分の中にある恐れや不安に対して、神が私にしてくれたこと、私が神にあってどういう存在なのかを思い起こすことで、安心して神を信頼しやすくなってきました。私が完璧である必要はなく、まず福音を味わうことで生まれるものを共有したいです。

文化に対する見方も変わりました。文化というと、それまでの僕のイメージは伝統や風習といったものでした。もちろんそういうものも含まれますが、職場や家庭にもそれぞれの文化があることに気づきました。日本的にいうなら空気感。その場所での常識や当たり前が存在し、そこにも福音が表される必要があると気づきました。人の救いということだけが福音の役割ではなく、神は文化にも影響を与え、文化をより良い方向に回復させていくことも大切だと改めて考えるようになりました。沖縄には比較的キリスト教会が多いですが、祖先崇拝が文化の大きな部分を占めています。コミュニティや家族の付き合いを大切にする良さもありますが、逆にそれが強すぎて偶像になってしまうという壊れた部分もあります。だからそういう繋がりの強い親類縁者の中で一人クリスチャンになるのはまだまだハードルが高い現状です。特に親戚が集まるイベントには料理や準備の手伝いをして愛を示す、というクリスチャンもいます。

ー開拓者として、難しかったこと、嬉しかったことは何ですか?

難しかったことは、牧師という肩書きがついたことで、距離感が変わった人がいること。私としては牧師になる前と変わっていないつもりでも、肩書きで一歩引かれてしまうのは、寂しい気もします。まあ、私の教会では、「先生」と私を呼ぶ人はいませんが、笑。

嬉しかったことは、人の成長を見ることができたことです。同じようなサイクルで悩んでいる人が、状況は変化していなくても、心に変化が起き、神に信頼できるように変わり続けていく様子を見ることができるのは嬉しいです。

個人的には、以前より神さまと仲良くなった気がすることが嬉しいです。説明は難しいのですが、自分の限界を認め、結果を委ねることができるようになったおかげなのかなと思います。

ー家庭と仕事のバランスはどのようにしていますか?

妻とよくコミュニケーションを取ることを意識しています。まだ夫婦二人だけで共に在宅での仕事をしているので、今はそうしやすい環境にあることを感謝しています。もともと私が牧師になりたいこと、教会開拓したいことは共有していたし、そういう人との結婚を考え祈っていた妻なのですが、開拓期のさまざまなストレスはあるので、パラカレオに参加することで助けられています。

ーご自身のケアはどのようにしていますか?

友達とおしゃべりをすることや一人の時間に日曜の説教準備とは関係のない本を読んだり、他教会の説教を聞くことも自分のケアになっています。

ーコロナ禍でご自身の仕事や家庭生活にどのような変化がありましたか?それにどう対応していますか?

個人的な生活面では特に大きな変化はありませんでしたが、教会外の人と会う頻度は少なくなりました。以前は幼馴染の友人たちと理由もなく気軽に集まれていましたが、それが難しくなり、集まるにしても少人数になりました。多くにリーチアウトするは難しいですが、無理せず、一人一人と関係を築く良い機会になっています。

ー座右の銘は?

「God is good」神は良い方です。

理解できないことが人生にはありますが、全てを理解する必要はなく、良い神に信頼することを選ぶようにしています。これまで、神の良さをたくさん味わってきたので、これからも神は私を愛し、変わることのない方であると信じています。

ー他の牧師、伝道者、ミニストリー従事者に、インテンシブ参加をお勧めしますか?それはなぜですか?

牧師やミニスターが燃え尽きてしまうことをよく耳にします。私も教会開拓を始めてみて、母教会の1リーダーだった時とは、違うプレッシャーがありました。やり方やプログラムを変えてみようとしたり、外側を変えることでは解決しませんでした。インテンシブに参加したことで、自分の心と向き合い、福音に安息を見出すことの助けになりました。牧師やミニスターの心が燃え尽きずに前進していく方法を学ぶために、インテンシブに参加することをお勧めします。


ーこれから教会開拓を考えている方にCTCJのインテンシブ参加をお勧めしますか? それはなぜですか?

教会開拓は、どこかの成功しているプログラムを持ってくれば同じ結果が得られるといったものではありません。ですが福音はどの地域でも、どんな人達にも適用することができます。何よりまず、自分自身に福音を語るということを学び、福音の理解を深めるのに役立つので、インテンシブへの参加をお勧めします。そして、その後にコーチングを受けることができるところがとても良いです。自分自身だけでは見えない視点や考え方を引き出してもらう助けになります。そして、参加者は教会開拓者か、これから開拓しようと考えている方々なので、同じようなシーズンにいる方々との交流も励まされるのでお勧めします。


ー教会開拓やミニストリーについて既に知識や経験はある方がインテンシブで学ぶ必要はあると思いますか? それはなぜですか?

聖書の御言葉に基づいているので、まったく新しい情報ではないのですが、どのように人生に適用させていくのかという面では、新しい発見があるかもしれません。ミニストリーに疲れを感じていたり、迷いがある方には、アイデンティティや今の働きを見直す機会として素晴らしいものとなると思います。


ー今後、インテンシブについて、日本でどんな活動や展開を期待していますか?

内容がとても素晴らしいので、一般的な仕事をしている人でも参加できる工夫があると助かる人もいるのかなと思います。私はインテンシブ参加時は、教会開拓をしながら保育士として勤務していました。なので後半のプログラムのいくつかには参加できませんでした。開拓初期は、別の仕事をしながらミニストリーをしている方が多いのではないかと思います。そういった開拓者にもインテンシブに参加するチャンスがあれば、嬉しく思います。

我如古 伝

Den Ganeko

読谷生まれ、読谷育ち。アメリカのPortland Bible Collegeで学び、沖縄バプテスト連盟ジョイチャペルで伝道師として仕えた後、枝教会サンセットチャーチの開拓を2019年スタート。趣味はTシャツ作り、ボードゲーム、読書、マンガ。妻の倫子・愛犬のサンデーと一緒に神様の愛を味わいながら毎日を過ごしている。