あなたのストーリーを語ろう

人生は予期しない出来事だらけ。まるで予測不可能な旅のようです。全く予想外の出来事に直面したとき、自分の経験を理解する助けになるのがストーリーです。自分のストーリー(物語)を分かち合うことで、他の人に思いがけない気づきを与えることができるすばらしい力が、リーダーには与えられています。

聖書にも個人的なストーリーがあふれています。新約聖書のパウロの証言から、旧約聖書のダビデとエステルのストーリーに至るまでどのストーリーも、コミュニティの絆を強め、励まし、人々を動かす個人的な証しがいかに重要かを示しています。

リーダーシップとは、単に決断を下し指示を与えるだけでなく、より深いレベルで人々とつながることが要求されます。自分のストーリーを語る、それだけで力強いツールになります。聴く人は 「自分がこの状況にいたらどうするだろうか?」と考えさせられるからです。聴いているうちに語り手に共感を覚えるようになります。それは自分と聴いたストーリーを重ね合わせて考えられるという大きな力です。その共感はやがて人々を結びつける架け橋になります。リーダーはストーリーを語ることで、新しいアイディアを示したり、組織の草創期から現在に至るまでの状況、そしてこれから目指す姿までの道のりを説明することができます。ストーリーを使ったこのアプローチは、チームメンバーの関心を引き、共通の目的を理解させ、一体感を育てることができます。


とは言え、弱さも含めありのまま見せるというのは最初はためらわれるもしれません。でもリーダーが心を開くことから生まれる強さを認めると、そのような懸念にも対処することができるでしょう。個人的な葛藤を素直に表すリーダーは、より深いレベルでコミュニティとの絆を築くことができるからです。自分の不完全さを認められる、それはリーダーとして謙虚で真摯であるということです。また語り手も同じようにイエス・キリストの恵みと愛によって救われた罪人なのだという同じアイデンティティを、聴き手にさらに実感させることができます。

都市でのリーダーシップといった文脈では、ストーリーテリングの重要性がさらに顕著です。都市のリーダーが語る時、そのストーリーを通して共通の目的と価値観が示され、人々を福音のムーブメントに参加したいと思わせる大きな力となるからです。また思い込みや固定観念が氾濫する世の中で、個人的なストーリーを語ることで語り手自身も自分の論点をさらに練り上げていくことができます。もしあなたが自分でそのストーリーを語らなければ、他の人があなたの代わりにあなたのことを解釈して語ることになります。でも、あなたの言葉で語られなければ、そのストーリーは不完全で不正確です。あなたのストーリーはあなただけが語れるのです。個人的なストーリーを語ることで、都市のリーダーは思い込みを打ち消し、コミュニティ内でのさらに深い理解を育み、もっと大きな協力につながる信頼の土台を築くことができるでしょう。

ストーリーの本質は、成長と変化にあります。ストーリーの中で共感が育まれるのは、リーダーが直面した課題、決断した選択、起こした行動の結果についてオープンに語る時です。ストーリーテリングは一方通行ではなく、語ることと聴くことの両方が必要です。心を開いて相手の話に耳を傾けることでも語り手は聴き手と深いレベルでつながり、共通の感情や経験を認識することができます。

ルカによる福音書8章では、イエスがヤイロの娘を癒しにいく途上の場面が描かれています。

人混みの中でイエスは自分の力が出ていくのを感じました。

「 彼女は隠しきれないと知って、震えながら進み出て御前にひれ伏し、イエスにさわった理由と、ただちに癒やされた次第を、すべての民の前で話した。イエスは彼女に言われた。『娘よ、あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい』」(ルカ8:47-48)。

まさに判断せずに耳を傾けることの重要性を示す素晴らしい一例です。真摯に耳を傾けることによって、ストーリーは共感と理解を生み出し、人々をひとつにし、孤立という錯覚を払拭する媒体となるのです。



情報にフィルターをかけたり、データばかり優先しがちな世界では、ストーリーは表面的な関わりからもっと深く知り合うための架け橋となり、共感とつながりを生み出します。互いにストーリーを語り合うことで、それぞれ人間としての経験の共通点を認識できます。

リーダーは、個人的なストーリーを分かち合うことで、同じ価値観へと聴き手を招き、一つの集まりとして行動することへの動機付け、協働に向けた一体感を作り出します。ですが最終的にストーリーテリングが思い出させてくれるのは、私たちが孤独ではないということです。私たちは皆、人間としての経験を共有していること、その一部であることを思い出させてくれるのです。ストーリーテリングを通して私たちは、人生を通して神がよくしてくださることを振り返り喜び祝う機会を得るのです。

そして今度はあなたの番です。あなた自身についてのストーリーを、ぜひ下記までお寄せください。あなたの人生の中で、リーダーとしての召命と葛藤した具体的な瞬間でもいいです。幼少期でも、きのう起こったことでも、個人的な試練に直面した時のこと、そんな時どのように乗り越えたか、その経験が今のあなたをどのように形作っているのか。あるいは、何年も経った今、神があなたに何を教えてくださっているかというストーリーです。リーダーとして他の人たちの視点を知り、また自分自身の視点を分かち合うことで、私たちは個人として、また世界中にいるクリスチャンのコミュニティとして成長することができます。あなたの体験談の大小にかかわらず、ぜひ私たちのチームと共有することをご検討ください。 あなたのストーリーが誰を励ますことになるのかわからないのですから。

* (編集部注)都市で働くリーダーとして互いに励ましとなるようなストーリーをシェアしてくださいませんか? 未発表、発表済みどちらでも構いません。 お寄せいただいた「あなたのストーリー」は、公開する許可をいただいた場合にのみ、本ブログおよび、CTC関連組織メディアに掲載させていただきます。お問い合わせはasako@citytocityjapan.comまで。

著者:レイチェル・オジョ

Redeemer City to Cityムーブメント戦略サービス部門アシスタント・ディレクター。非営利団体、政府機関、慈善団体における協力関係の構築に10年以上の経験を持つ。深い人間関係を培い、異なる視点間の対話を促進し、戦略を統合することで、City to Cityのグローバル・リーダーのエコシステムを強化し、管理することに取り組んでいる。夫とともにニューヨークのブルックリンに在住。